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【特別寄稿:一考・教養主義】


元財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会副会長
阪田貞宜

さかた・さだよし 1919 年生まれ。1943年東北帝国大学卒業後、国立国会図書館、アジア経済研究所を経て、1986 年(財)国際ビジネスコミュニケーション協会の設立に参加。理事長、副会長として「TOEIC」の普及に携わり、2008 年退職。
主な著書に『英語初級者のための自学自習レッスン』ぎょうせい、2009 年など。今年10 月にはNPO「元気な120 才を創る会」が選ぶ2010 年「ヘルシーエイジングパーソン」に選ばれている。

第6題 時空――多次元の世界

時空理解と数学

 コペルニクスが地動説を唱えたのは十七世紀のことです。以来宇宙は神の手から離れて科学の対象となりました。

 現在ではアルベルト・アインシュタインによって、宇宙は三次元の空間と時間との不可分な一体とされ、「四次元時空」と呼ばれています。
 アインシュタインはこの「時空」(space-time)について相対性理論を唱えました。

 天文学はこの理論を基にして「ビッグバン」「ブラックホール」「重力レンズ」など宇宙に関する新しい現象が研究の対象になってきました。
 しかしこれらの現象はどういうことなのか一般の人にはほとんど理解できません。わたくしも何回か初歩の解説書を読みましたが解りませんでした。

 時空に関する理論は物理学ですからその研究の基礎には数学があります。数学はわたくしのような文科系の者が通常最も苦手とする科目です。

 旧制高等学校では「文科の数学」として微積分や関数などは教科に組みこまれていましたが、初歩を一通り学んだだけで、逆説的に言えば「数式のない数学」でした。

 しかし、例えば微分方程式の計算はできなくても、微分は「経済成長のある時点での傾向を知るのに用いられる」など、日常生活に数学が役立っているのを知ることはできました。

 本稿でも「四次元時空」を「文科の数学」のレベルで考えています。

次元とは

 時空は多次元の世界ですから、次元を考えることが時空を理解するいとぐちになると思います。現今の天文学では四次元を超えた多次元の世界まで研究されているようですが、専門の人でなければ理解できないでしょう。本稿では三次元について考えてみることにします。

 三次元は直角に交わる三本の直線で表されます。この三本の直線を座標軸といい、立方体を表すことができます。空間はこのような立方体です。

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 立方体の中の一点(a)は座標軸の基点(0)との間に直角三角形を形づくります。基点(0)との角度をθとすれば、この直角三角形には三角法が適用できます。
02.jpg


 一点(a)がある条件にしたがって動けば、平面ではグラフとして、立方体では三角法による軌跡として表されます。この曲線とある直線の接点は微分でその点での曲線の傾向を表します。
 時空の中に座標軸となる具体的な線があるわけではありませんが、時空を次元で考えれば、時空の中の動きを数学によって表すことができます。

「相対性」とは

 ニュートンは物体の運動の基準として静止した個所すなわち絶対座標を挙げましたが、アインシュタインはこの考えを否定しました。

 すると時空の万物は絶えず流動しており、その関係は相対的になります。物理的法則を考えるとき、とかく絶対的基準をおきがちですが、この思考が相互関係を基調とする相対性理論の理解をはばむ一因であるとわたくしは思います。

 相対性理論のもう一つの支柱である「光速度不変の法則」では「光の速度は時速30万キロメートルで一定」としますが、この法則も理解し難い面があります。

 「ドップラー効果」は有名ですが「音源が近づく時には大きく、遠ざかる時は小さくなる」現象です。空気中を伝わる音波に強弱があるというこの知識が光速不変の法則を解り難くしていると思います。
 光速度不変の法則は光が電磁波として真空の中を進む現象に当てはまります。

素養としての相対性理論

 相対性理論をすぐ理解できないとしても、時空についての知識は教養としてどの程度あればいいのでしょうか。
 カントは「宇宙の始まりや終り」は理性を超越した形而上学の問題であるとしましたが、現在の天文学は「ビッグバン」「宇宙は膨張している」など宇宙の現象をすべて科学の対象としています。

 人間の生命を育んでいる宇宙は人間の最大の関心事です。われわれには宇宙について、理解できるかぎりの知識の習得が求められているでしょう。

 また相対性理論は人生を過す上での数々の教訓をわれわれに与えてくれます。

 第一に人生も流動的かつ相対的であり、他者との相互関係で営まれるので相互の円滑なコミュニケーションが何よりも大切であること。

 第二にニュートンの絶対座標の考えがくつがえされたように、人生には想定外の変革が常に起り得ること。

 わたくしたちは科学を通じて単なる知的教養だけでなく、日常生活に処する素養として科学する心を身につけることが大切です。


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