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ルポルタージュ番組小学校の伝統を継承、洗練する学校づくり

京都市立京都御池中学校(廣瀬忠愛校長)では、平成16年から学校運営協議会を設置し、地域と一体となった学校経営を行っている。明治初期に設立された番組小学校から数え、150年近い伝統を誇る地域と学校のかかわりのなかで、いま、コミュニティ・スクールに取り組む同校の実践の一端を紹介する。

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2011年8月号

京都市立京都御池中学校

9年生「しゃべり場」では、保護者・地域住民と中学生が向かい合って意見交換

6月26日の日曜日。京都市立京都御池中学校(以下、御池中)の体育館に大勢の中学生と保護者・地域住民が集まった。
体育館に円描くように椅子が並べられ、内側に大人、外側に中学生が向かい合って座る。膝が触れ合うほどの距離で子どもと大人が一対一で向かい合い、御池中の「しゃべり場」が始まった。
制限時間は1人1分間。持ち時間の間に一つの共通のテーマについて自分の考えを相手に話す。
御池中の学校運営協議会「けやきプロジェクト」が昨年度から行っている「しゃべり場」の取組みだ。
最初は、ぎこちない様子の大人と子どもたち。硬い雰囲気をほぐすために最初の話題は「うどんとそばどっちが好きですか?」というような簡単なテーマからスタートした。
制限時間が過ぎると、外側に座る生徒たちが一人分席を移動し、今度は別の相手と違うテーマで話し合うことになる。
「しゃべり場」の全体の制限時間は20分。1テーマ1人1分で語り合うため、1回の「しゃべり場」で中学生は10人の大人たちと話すことになる計算だ。
対話を重ねるごとに、テーマもだんだんと難しくなり、「どんな生き方がしたいか、もしくは、したかったか」など自身の生き方に関わる質問や、この夏の電力不足に関して「電気を使わずに涼しく過ごす自分なりのアイディアは?」など、時事問題まで多岐にわたるテーマが取り上げられた。
緊張気味の生徒たち。一方大人は余裕かと思いきや、地域住民や保護者にとっても、たくさんの中学生と話す機会は日常生活ではほとんどない。参加した保護者や地域住民からは、「なかなか中学生の本音が聞けないからよかった」という声だけでなく、「真剣に話すと疲れますね。中学生に嘘はつけませんから」といった声も。この日は200名以上の保護者・地域住民が参加し、御池中の「しゃべり場」は盛況のうちの幕を閉じた。

地域一体の学校づくり「けやきプロジェクト」

地域の「夏まつり」に中学生ボランティアが活躍

御池中は、京都市中京区にある小中一貫校。平成18年に完成した複合施設「京都御池創生館」の2階から5階までのフロアに中学生と小学6年生が学んでいる。
平成16年に学校運営協議会を設置し、平成17年には文部科学省の「コミュニティ・スクール調査研究校」の指定を受けるなど、全国でも早くから地域コミュニティを基盤に据えた学校づくりに取り組んでいる実践校だ。
その同校の学校運営協議会が「けやきプロジェクト」。会長、副会長、学識経験者や学校管理職で構成される理事会以下、「学校教育支援委員会」「地域教育支援委員会」「学校評価委員会」で構成されている。
「学校教育支援委員会」は、土曜学習部会、しゃべり場部会、人材部会、図書館部会、敬老プレゼント部会の5部会。「地域教育支援委員会」はパソコン講座部会、ボランティアセンター部会、おもしろ講座部会、学区別集会部会、漢検部会の5部会で構成され、学校の教育活動に対して地域の力を取り入れる事業を「学校教育支援委員会」、地域の活動に学校が参加する取組みを「地域教育支援委員会」が受け持っている。
現在、けやきプロジェクトに参画する地域住民は100名以上。各部会は基本的に部会、委員会単位で集まり、活動を行っているが、活動の内容によっては適宜理事会を通じて「けやきプロジェクト」全体に働きかける。冒頭の「しゃべり場」の取組みの場合は、「学校教育支援委員会」を通して、理事会がほかの部会のメンバーや地域有志、PTAなどに声かけを行い、休日の学校に200人以上の地域住民を集めた。役割別に分類された委員会単位で各部会の活動を把握、調整することで「けやきプロジェクト」は運営されている。
また、このほかにも、教職員だけでなく、保護者や地域住民、生徒らによる「投票」で図書館に入れる本を決める選書活動や、地域のお祭りなどに生徒が参加するボランティア活動、地域の識者を招いて学校で行われる地域参加の「おもしろ講座」など地域と一体となったユニークな取組みが「けやきプロジェクト」の各部会の主導で行われている。

「研究発表会」での公開授業の様子

御池中の前に立つ柳池校跡地を示す石碑

地域の想いを受け継ぐ学校づくり

「グループ学習」で考えを発表し、交流する

地域コミュニティを基盤にコミュニティ・スクールとしての様々な活動を行う御池中。「地域の学校への想いはとても強い」と同校の廣瀬忠愛校長は言う。
御池中が入居する京都御池創生館のある場所は日本で最初の近代学校といわれる柳池校の跡地。柳池校は、明治2年に京都の町衆が作った最初の「番組小学校」だ。当時、都が東京へと移ることに危機感を抱いた京都の町衆が行った取組みは大きく三つ。全国で初めて町の中に市電を敷設したこと。琵琶湖から水を引く疎水事業を行ったこと。そして、もう一つが学校づくりだ。
各家のかまどの数に応じて寄付金を募り、番組といわれる地域単位ごとに学校をつくった。それが番組小学校というわけだ。
その後、学制が公布され近代学校が整備されるにつれ、学校数も増加。昭和50年代には柳池校があった学区域には14の小学校と5つの中学校が存在した。しかし、その後少子化などの影響から、統廃合が進み、平成7年には小学校は御所南小学校と高倉小学校の2校に、平成15年には中学校は京都御池中学校の1校になるまでに統合が進んだ。しかし、番組小学校の流れを汲む学校の統合を惜しむ声は地域に根強く「地域の想いを学校経営に活かす仕組みが京都には必要だった」(廣瀬校長)。
平成16年には、その〝仕組み〟の一つとして、地域住民が学校経営に参画する学校運営協議会が御池中に設置され、平成19年度には御所南小と高倉小と御池中による小中一貫教育がスタート。5・4制による一貫教育が行われており、両小学校も学校運営協議会となる「御所南コミュニティ」(御所南小)「スマイル21委員会」(高倉小)が設置され、「けやきプロジェクト」と連携した取組みを実施している。
御池中の3学年と両小6年生が学ぶ京都御池創生館も地域に根ざした同校ならではの施設だ。学校施設のほか、1階には商業施設のイタリアンレストランや小物ショップ、老人デイサービスセンターや0歳児から預けることのできる託児所のほか、6階、7階には市の保健福祉局などが入居するオフィスとなっている。今後、託児所の拡張や生徒数の増加にともなって、市のオフィス利用はなくなるが、老人から乳幼児、小・中学生、地域住民が集う多世代共有の拠点としての役割が期待されている。
「昔の番組小学校には、学校だけでなく、消防団など地域の機能が集まっていました、創生館の敷地には地域の消防団の建物もあるんですよ」と廣瀬校長は言う。学校を地域づくりの拠点と位置づける自治体は多いが、こうした地域の拠点となる複合施設に学校が入居する例は全国でも珍しい。

積み上げた伝統をどう〝精選〟するか

廣瀬忠愛校長

地域に根ざした新しい校舎と充実したコミュニティ・スクールの組織体制、学区に残る豊かな学習財を持つ御池中。運営面での課題はないのか、廣瀬校長に聞いてみた。
「あえて挙げるとすれば、活動の精選ですね。取組みの幅を広げるのはそれほど難しいことではないんです。子どもにとっていいことだから、『あれもやりましょう、これもやりましょう』と決めることは簡単です。でも、そうすると地域の方や教職員の負担はどんどん大きくなる。ある一定の限度を越えるとその〝負担〟というのは、〝不満〟に変わってしまうんです」
そこで、今年度に廣瀬校長が着手したのが、組織の再編成と事業の精選だ。「けやきプロジェクト」は昨年度まで、理事会の直下に「心の教育部会」「土曜居講座部会」「福祉・ボランティア部会」「人材バンク部会」「読書部会」が設置され、その下にさらに目的別の部会が存在する形になっていた。
「その形だと部会ごとの運営になり、隣の部会が何をやっているのかわかりにくい」
そこで、全ての部会を、学校教育を支援するものか、地域教育を支援するものかの観点から2種類に分類(学校教育支援委員会と地域教育支援委員会)。あわせて活動の精選を行い、組織を整えスリム化した。
例えば、母校に成人した卒業生が集まり、同窓会を行っていた「成人の集い」は、市が主催する成人式があり、学校独自で行う必要は相対的に低いとの理由で廃止した。「母校に愛着を持ってもらうという観点ではとてもよい取組みです。でも、同じことを市がやっているなら、学校が独自にやる意義は低くなる。どこかで線をひかないと、学校はパンクしてしまうんです。でも、地域の方と始めた事業は終わらせるのは本当に難しい」(廣瀬校長)
長年の伝統と学校支援に対して労を惜しまない地域性を持つだけに、「いいものはなんでもやる」という姿勢では学校経営は続かないというわけだ。
「でも、きちんと話し合うこと、自分の考えをもってじっくり話し合えば必ずわかってもらえます。大事なのは〝ひざを突き合わせて話すこと〟。『しゃべり場』と同じですね」そう言って廣瀬校長は笑った。
(取材・本誌/西山朋樹)

プロフィール

京都市立京都御池中学校
〔学校規模:児童生徒数937名(内小学生271名)教職員●名〕(平成23年●月●日現在)
〒604-0955
京都市中京区柳馬場通御池上る虎石町45-3
TEL:075-221-0414  FAX:075-221-4380
平成15年4月開校。平成16年11月「学校運営協議会設置」指定。平成18年3月内閣府より小中一貫特区認定。同4月京都御池創生館新校舎へ移転。平成19年4月より御所南小、高倉小6年生が中学校校舎で教育活動開始。学校教育目標「豊かな人間性と未来を創造する生徒の育成」〜輝きあい、育ちあう、魅力あふれるコミュニティスクール〜。

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今月の特集:

【特集:学校のこと、授業のこと しっかり考えてみませんか】

【定価(価格)】
800円(税込み)
【雑誌コード】
17593-10
【発行年月日】
2011年09月16日
【図書コード】
7140001-11-100
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