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学校経営大賞第4回/学校が変わるー小中一貫教育の魅力

ENTRY No.1 2010年4月号

奈良県奈良市立田原小中学校長 木口 篤

私のモットー

人の話にはすぐ耳を傾ける。地域、保護者、教職員そして子どもの声を全身で受け止める。
これが私の学校経営の出発点である。仕事途中であっても、手を止めて最後まで聞く。相手は聞いてもらうだけで安堵するのだ。いつでも聞いてもらえるという安心感が組織の機能を円滑にすると思っている。
適材適所ということも大切にしている。教職員が意欲的に働ける環境をつくることは校長の責務である。彼らの熱意がそのまま子どもたちの学びと育ちに反映されるからだ。
学びが楽しい、行事が楽しい、子どもたちも教職員もワクワクするような学校づくりを私は目指してきた。
奈良市東部にある施設一体型小中一貫教育校。市で唯一の小中学校の校長になったときも、子どもたちや先生のことが気になった。
いくら新しい教育システムのパイロット校であっても、学校に活気があり楽しくなければ
失敗だと思うからである。私は、学習や行事の様子を観察した。その結果、学ぶ意欲の高さ、異年齢集団で活動するときのいきいきした表情を目の当たりにして、不安は確信へと変わった。小中一貫教育こそ六・三制に代わって新しい活力をもたらす制度になるのではないかと。このとき、私の使命は小中一貫教育をさらに進化させ、広告塔になることだと悟った。

私の取組み

小中一貫教育を多くの人々に発信するため、私は視察者を無条件で受け入れることにした。3年間で120回、2000名以上の人々に成果を伝えたことになる。説明用のパンフレットは写真をたくさん取り入れ、わかりやすいものに作りかえた。講師としての要請があれば市内・県外を問わず応じた。なかでも第3回小中一貫教育全国サミット(東京都品川区開催)ではシンポジストになって、奈良市の小中一貫教育を全国に広めることができた。県から、本校のDVDを制作したいという依頼があったときにも快く応じた。専門業者が1年間取材し15分にまとめた番組は、地元のテレビ局で2回放映された。
また私は、学校目標にある「世界にはばたく人間を育成する」という文言をどんな方法で具体化したらよいのか思案していた。そんな折にユネスコ・スクールを知る機会を得た。
ユネスコ・スクールとは、環境・人権・平和・多文化理解などをひとくくりに捉える大きな概念、ESD(持続発展教育)を進めるための拠点となる学校のことだ。私は、教職員に理解を求め、ユネスコ・スクールに加盟した。そして、ACCU(ユネスコ・アジア文化センター)の事業で韓国教職員を受け入れたり、桂幸丸師匠の落語を聞いたりした。
校内での取組みに加えてグローバルな要素を取り入れることで、やがては世界中のユネスコ・スクールと交流するようになることを願っている。
本校は小規模校・少人数の学校である。したがって同じような規模の学校からの視察が多い。広島県廿日市市の宮島小中学校は本校をモデルにして一貫教育を進めている。そこで姉妹校提携を提案したところ、修学旅行時にそれぞれの学校を訪問し合うという計画が実現した。お互いの世界遺産を紹介するなど交流を続けている。
小規模校の宿命は、多くの人と切磋琢磨するような刺激がないことだ。少人数で9年間生活するので、他者とかかわるコミュニケーション力が不足する。そうしたマイナス面を補うため、校外学習で観光客にインタビューしたり、行事の後に全校集会で報告したりする取組みを進めていた。あらゆる機会を捉えて人へのかかわり方や伝える力を育てる必要がある。私が視察者の受入れや姉妹校提携、ESDに力を注いでいるのも、同じ意図からである。
そのほか、小中一貫教育が奈良市教育委員会主導で始められたので、教職員は上意下達だと不満を抱いていた。その不信感を払拭した。また、手つかずだった特別支援教育を軌道に乗せた。全教職員が9年間を見通して指
導できるという点で、小中一貫は特別支援教育にとって効果的なシステムだといえる。また、新学習指導要領を市教委と検討し、21年度から小中同時に完全実施した。
地域との連携では、全国で唯一伝承されている伝統芸能「祭文」の語りを学校教育に取り入れたこと、炭焼きガマを設置して、今話題の竹炭作りを始めたことなどがある。

特色ある取組みと成果

6歳から15歳の子どもが同じ空間で生活する異年齢集団活動。年長の子が年少の子を指導することで、自分が役に立っているという自尊感情が育つ。ともに活動することで思いやりや優しさが育つ。年少の子は年長の子を将来のモデルとして、見通しをもつことができる。心の安定は学ぶ心構えをつくり、学力向上へとつながっていく。
新設3教科は奈良市小中一貫教育の特色である。1年から英会話科、3年から情報科、5年から郷土「なら」科および英語科を学ぶ。市のオリジナル教材なので、教職員は手探り状態で授業案を作成しなければならなかった。中学教員が小学生を教える入り込み授業もある。中学に入学してきても同じ子どもを教えるので、理数科や英語などは苦手意識をもたせないよう工夫した指導ができる。
こうした教科の苦労や工夫は、教職員の授業力を高める。小・中という異質なものがまざりあって学校に活力が生まれている。教職員、児童生徒ともに新鮮な気持ちで意欲的に取り組んでいるのである。
前期(1〜4年)・中期(5〜7年)・後期(8・9年)という3ブロック制。ブロック行事の企画運営を前期4年、中期7年に任せることで、リーダーとしての力量が育つ。その経験は後期で学校全体のリーダーとなったとき、さらに生かせるのである。豊かな心と確かな学力を間違いなく育成する、それが小中一貫教育なのである。

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